9年前のiPhone3Gに、鯉たちが泳いでいた。
iPhoneXがでている。情報が出揃ったら換えるつもりだ。もう10年目になるのか、と改めて初号機を取り出してみると、色々思い出されて、少しメモしておきたくなった。
初代iPhoneは、2007年1月9日 カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーン・ウェストで開催されたMacworld Conference で発表された。スティーブ・ジョブスの「誰もが使える最高のデバイス・指を使おう 」いうプレゼンにワクワクしたのを覚えている。ジョブスのプレゼンは楽しい。オーディエンスを品の良いジョークでクスリと笑わせながら、ジョブスの共犯者=ファンを増やしていく。私もすぐに触ってみたかったけれど当時、日本での発売予告はなく、Macユーザーたちは悔しさを確かめ合ったものである。
翌2008年の夏、やっと日本でも発売されたiPhone3Gは、今改めて手にするととても小さい。現在使っている6Plusの画面よりもさらに一回り小さかったなんて。ホームボタンはコンタクトレンズのようになめらかな曲面で凹んでいるボタンで、縁がなく美しくて好きだ。柔らかな曲面のデザインは手に馴染むが、小さい割に重いので、落としやすい。でも思いのほか頑丈だったようで、毎日使っていたのに今もって大きな傷もなくキレイなままである。なぜだか背面には日本野鳥の会特製に違いない、ゴイサギのシールが貼ってある。
さて、たぶん一番最初に入れたアプリは Koi Pondだったと思う。池の鯉を眺めて癒される、世界中でダウンロードされた人気アプリだ。何に役立つでもないれど、消さずに残っていて良かった。早速立ち上げてみる。
CG画面が本当に美しい。指で画面を撫でては、水面をチャプチャプとさせて楽しむ。言語によるコミュニケーションはない。水面が荒れると鯉は逃げていなくなるが、iPhoneを振ると餌がまかれ、待っていると鯉たちは戻ってきてパクっと食べていく。雨の音、風の音、蛙、鳥、虫たちの声を重ねて聴くと、なかなかにうるさくて良い。
こちらが起こすアクションへの反応には不規則で自然な「間」があり、それが心地良い。育てゲーでもなく、教育ゲーでも便利ツールでもないアプリでである。ただ指という入力デバイスを、「指らしく」使っていつまでも楽しむことができる。「IT技術×東洋的モチーフ×ヒーリング」というあたりが、いかにも西海岸ぽくて嬉し懐かしいと思った。同時に、昔のマックワールドエキスポにはヒッピーのような素敵な人たちがたくさん参加していたのを思い出す。
それにしても軽快に動くものだ。 9年も前に使っていたとは思えない使用感に嬉しくなり、音楽プレーヤーとして再び使用してみることにした。
電池の減りが早いということ以外は殆ど問題がない。Bluetooth経由でステレオアンプから音楽を再生できるし、OSが古くたってプレイリストの編集には全く困らないではないか。モバイル利用時には機内モードをオンにしてWifiを断てば電池の持ちも良い。音楽プレーヤーとしてだけ使うなら十分。
そしていつでも鯉の池をチャプチャプできる!
このアプリはもうiTuneストアで入手することはできないようだ。9年ものあいだ机の中に眠らせておいた鯉たちを泳がせながら、久しぶりのiPhone3Gを愛でている。